昨日の彼女の話の内容を参考にし、少しずつ実践していこうと思い、
今日も朝早くから出社です。
業務開始前に、現場に行き、試験課の課長にカイゼンの糸口があるのか、
また、計画業務は楽になる可能性があるのか、ないのか?
確認しておきたいと思っています。
7時45分、ぴったり課長が来ました。 こちらをちらっと見て、現場事務所でたばこに火を付けます。
今日は何だ。
トラブルは聞いてないなー。
はい、実は、工程管理をシステム化したくて、ちょっとお話を聞かせて頂こうと思いまして。
ふーん
ただ、工程管理をシステム化しますと言っても、予算も出ないと思うので、
予算化するためには、費用対効果のような稟議資料を作りたいのですが、 それで、先ずは課長にお聞きしたいことがありまして。
そりゃ、大変だな。めんどくさいことをやりたいのか。
設計変更やトラブル時の対応を、まー、計画変更時に迅速に対応できるようにしたいと思いまして。
はー、そりゃ、おまえが早く帰りたいってやつか。
そうです。そうなんですけど、ちょっと勉強したんですが、
計画変更時以外にも、工程の進捗状況を把握したり、工場内の負荷を把握することで、
中長期の計画の精度を上げて、いわゆる、工場の最適化のようなことができて、
結果、オーダ毎のリードタイムが短くなって、生産性が上がったり、 すぐには、そんなにうまくいくわけ無いとは思っていますが、徐々にですね。
課長はピンと来ていないような顔だ。ちょっと気を取り直して、
えーと。もっと簡単に言うと、
みんな、毎朝、計画表を見ながら、現物を確認しながら、
今日はこっちをやって、とか、昨日の続きをしようとか、相談しながら作業してますよね。
夕方は、みんな図面を見ていたり、なんども資材の有無を確認したり、
計画表に進捗を書き込んだり、うまくいえませんが、 昨日、バルブの建屋に行ったのですが、ここと時間の流れがちがうというか、
そりゃ、おまえ、バルブは数週間でできるけどな、こっちは、何ヶ月もかかるものを作ってるんだ。
おまえからみりゃ、時間の流れが違うのは当たり前だろ。
日々の進捗がどこからでも見えて、その進捗と連動して日々計画が更新されれば、 生産性は上がりますよね。
あたりまえだろ、それが、おまえの仕事だろ。
毎日、おまえが滞りなくだな、 的確な指示というか計画をだせばいいんだよ。
なんか、かみ合っていないようです。
計画がころころ変わるから、仕掛かっていたものをどけたり、 おまえ、あれ動かすのに、どれぐらいかかると思うんだ。
うなんです、ここは、作業場所の確保も重要です。複数のオーダを同時進行させようとすると、
なんども、製品を移動することになり、それだけで、かなりの無駄な時間が発生します。
いや、それは知ってますよ。2時間ぐらいですよね。
外に出す場合には、半日かかりますよね。
あー、それは知ってるんだな。
いま外で野ざらしになっているやつが、3台もあるだろ。 あれを1台再開するのに、1日はかかるぞ。再検査とかあるしな。
いや、いろいろ難しいとは思うんですが、まだ、うちの課長には相談していないんですが、
システム化のための費用対効果として、リードタイム短縮、 イコール、生産性アップを目指して、上申できればと思っているんですよ。
まぁー、俺たちが、毎日、進捗確認したり、ものを探したりしなければ、2割は縮まるだろう、
リードタイムがな、 正直、1台だけ製造したら、今のリードタイムの半分でできると思うけどな。
えーそんなに、
だって、いま言われているリードタイムは、 1つのオーダだけ見てもそんなに短くないですよ。
あー、そりゃ、おまえ、こっちだって、ここは、あいつしかできないな、とか、
作業の順番だって、おまえ、あそこの佐藤班長が2人いれば、 前と後ろを同時に検査したりできるしな。
そうゆうことを考えて、おまえに、工数をわたしてるんだよ。
そうゆうことですか。そうですよね。
こっちは、作業者のことまで把握できないですしね。
ということは、こちらで、作業者のことまで把握できれば、もっと的確な計画ができるということですよね。
だから、それが、おまえの仕事だろ。
こっちは、毎日、急ぎのものばっかりくるから、結局できる人に作業をたのむわな。
こんなんじゃ、いつまで経っても作業者の教育の時間がとれないしな。
うーん、悪循環というか、問題だらけですね
おまえなー、人ごとみたいにいうなよ。
おまえは、若いんだから、そこをなんとかするのも仕事だろうが、
時間があれば、こっちももっと、現場を片付けて、潜水艦の2,3台作業できるスペースを確保したりできるんだけどな。
こー忙しくっちゃなー。それにこの不景気だからな、会社もとれるだけ受注したって感じだしな。
なんか、カイゼンする余地がほんとにあるんですね。
はー、なにをいってるんだ。当たり前だろ。
おまえは、何年この仕事やってるんだ。
すみません。もう3年やってます。
そういや、おまえ班長になったんだよな。
それなりの仕事をしてもらわないとな。
まー、いつも夜遅くまでがんばってるみたいだけど、 がんばってますの姿勢はいいけどな。
それなりの成果ってやつをださないとな。
そうですよね。これから、成果を出すために、システム化としうか、カイゼン活動をやっていきたいなー、 と思って、ちょっと相談させて頂きました。
さっそく、今日の夕方の生産会議で、提案したいと思っているんですよ。
そこまで、大々的にやるんだったら、応援するけど、おまえのとこの課長も、昔、おなじようなことをやって、 あまり成果が上がらなかったけどな。
そうなんですか?
いつごろのことですか?
5,6年前だなー。
まーでも、作業予定表はわかりやすくなったんだよ。
その前なんて、1週間先の予定表と、月単位の予定表だけだったんだからな。
そうなんですか?まずは、事務所に戻って、うちの課長に相談してから、出直してきます。 すみません。いろいろ、有り難うございました
おー、まあ、がんばれよ
気を取り直して、課長のところに戻り、先ほどと同じ話をしましたが、
工程管理したかったけど、なにが何処まで進んでいるか、結局現場に行かないと分からないので、色々あったけど、計画表を見やすくしたりとかで終わったんだよ。
とあっさり言われました。
今日は、何事も無くこの分だと定時で上がれそうです。
どうしても、今日も彼女に会いたくて、電話してみました。
もしもし、今日も早く上がれそうなんだけど、デートしよう!
あはは
って笑われましたが、いい兆しです。彼女があははと笑ってくれるときは、機嫌がいい証拠です。つかの間の沈黙の後、
いいよー
って、
じゃあ、食事できる所予約しておく~、決まったら電話するよ。
はい
と言うことで、今日も課長に定時に上がりますと告げて、会社の門を出たところで、お店に電話し、予約しました。
今日も彼女より先にお店に着いて、今日は先にビールと食事もオーダーしておきました。 結構遅れて彼女がやってきました。
ごめんねー、遅くなって。
いや、大丈夫だよ、今ここに有るものと後はこれとこれを頼んだよ、飲み物は?
じゃ、ビールで。
と言うことで、飲みながら、早速、昨日の話の続きを切り出します。
昨日のさあ、続きで、改善の。
あー、そっちか。デートしようって言うから、なんか期待してきたのにね。
ごめん、そうだよね、デートって言ったよね。
でも映画の話も音楽の話も一緒で、ちょっと仕事っぽいけど、こういう話もいいかな。と言うよりね。
昨日、目が輝いていたよ。
まぶしいぐらいにね。
あはは、そう。
と言いながら、また彼女の目が輝き出しました。
実はね、もっと具体的な話をしてあげたかったけど、
そのままだとお客さんの仕事内容をばらしてしまうのね。
それだと仕事的に問題があってね。
実は今日上司にどこまで機密扱いなんですか。
って聞いたのよ。
そしたら、改善の話なんで、俺も事例で良く話すので大丈夫だよ。って言われたのよ。
だから、いい話を教えてあげられそう。
ほんとに、いいね。助かります。
って言いながら、
ビールを呑んで、彼女が仕事が楽しくて仕方が無いなんて話を聞きながら、なかなか本題に入らないけど、まあいいかなと、なんか凄く嬉しそうだし、誘って良かったと。
2杯目のビールを呑んだ後に、彼女が
なに飲もうかなあ
って、
ビールじゃなくて、日本酒呑む?
と聞かれ、
そうだね。辛口がいいね。もちろん純米酒で、じゃあこれ注文するね。
と、日本酒がくるのを待って、早速、お猪口に注いで、かるくお猪口を合わせて乾杯し、一息ついて、彼女がついに話し始めてくれました。
作業時間を正確に見積ことは困難って言ってたよね。
本題に入ったんだね。と思いながら、頷きます。
計画のための作業時間は、目標時間だから、正確では無くても、この時間で出来るはずと言う時間が必要なの。
現場の人からは、実時間では無くて、リソースを考慮した時間をリードタイムとして教えてもらうんでしょ。
それは、工程管理の基本から外れてしまっているのよね。
工程計画、工程設計とか言うんだけど、プロジェクト管理の基本で、パート計算って聞いたことある?
PERT計算でしょ、PERT、CPMとか、パートチャート書いて、最早とか最遅を計算するんだよね
なーんだ、知ってるじゃん。そこで計算に使用する処理時間というか作業時間はどうするの?
どうするのって、その時間が分からないから、なんか平均したり、余裕時間入れたりとかするんでしょ
まあそうだけど、楽観値とか悲観値とか言うんだけどね。私のお客さんは、大手の自動車メーカーで、金型を作っているのね。金型って知ってる?
知ってるよ。バルブの鋳物も金型使ってるしね。
良かった、じゃあその説明は入らないよね。
そのお客さんは改善を上手にやる会社なのね。
だから、計算に使用する処理時間は、楽観値というか、この時間でできるはずと言う、非常に厳しい時間を設定するのね。
もちろん、その時間通りには作業ができないんだけど。
えっ、じゃあだめじゃん
まあまあ、
まず最初に言っておくけど、納期を守るという話はちょっと置いておいてね。
そのお客さんは、
たとえば、3時間の作業を4時間かけて作業したら、
目標が3時間だったので、実績の4時間との差の1時間を宝の山と呼ぶのよ。
その1時間は、改善して0に近づけるのが現場の仕事というか、改善活動なんだって。
だから、遅れるのは許容してるのよ。なんか凄いでしょ!
えー、そんなのうちの会社じゃ、怒られるよ。全く参考にならないんだけど。
うふふ
って笑っているけど、なんか良く分からないけど、馬鹿にされてるんじゃないよね。
多分俺のこと好きだし。
はい、話はまだまだ続くのよ!。
ちょっともう少し食べようか。
あー、そうだね。
と言って、メニューを見ながら、
これ、伊藤君好きでしょ!
私もちょっとは食べられるようになったのよ。
と言いながら、彼女が、牡蠣のオイル漬けと白子とお酒を注文しました。
さて
と言って、また彼女の話が始まります。
今までの話は、工程計画とか工程設計の話で、スケジュールじゃないのよ。
どこの会社でも、工程計画とスケジュールを一緒に混同して、同時に処理しようとするから、難しくなるのね。
工程計画は、ベストタイム、つまり厳しい目標時間を設定して、
リソース負荷の競合を解消するのがスケジューリングでしょ。
いわゆる山積み、山崩しね。
だから、工程計画とか工程設計するときには、リソースのことは忘れて欲しいの。
うん。その工程計画とスケジュールの話は納得できるけど、でもそれじゃ、納期を守れないよね。
今度は、スケジュールの話を聞いてね。
スケジュールとかスケジューリングとか、山崩しとか言われているけど、私のお客さんはね、順序計画って言うのね。
へー、順序計画って
順序計画は、各リソースに対する作業順番を決めると言う事よ。だから順序計画
あー、なるほど
オーダーとか製番とか呼ばれる受注した作業は、それぞれ工程計画で決めた作業手順が有るよね。
そして、納期があるでしょ。
たとえば工場の中に、一つのオーダーだけが流れていたら、そのオーダーだけやればいいので、かなりの納期余裕が生まれるよね。
そうだね。実際には複数のオーダーが流れているので、作業者や設備が空いていないから、そんなに納期余裕無いけど。
そうなんだけどね。
厳しい目標時間を設定して、工程計画をするでしょ。
そして、複数オーダーをまとめてスケジュールするでしょ。
前詰スケジュール、正確にはフォワードスケジュールって言うんだけどね。
納期を遵守して、前詰めでスケジュールすることにより、ある程度の納期余裕を確保した状態で、作業指示、つまり順序計画を現場に提示するの。
この状態で納期余裕が無い場合には、納期調整が必要ね。
大抵は、過去の経験則的なリードタイムを考慮して、受注しているので、大抵は、納期に収まるんだけどね。
ここまで分かった?
分かるよ
順序計画っていう言い方は、もっと大事な側面があって、計画した作業順番を守って欲しいのね。
なんで
昔の価値観で、
設備稼働率とか意識すると、
設備が空いていると、
計画と違う作業を実施したりね。
計画通りにやって貰わないと、
後工程も影響するし、
なにが正常で、
なにが異常かも分からなくなるでしょ。
その結果で計画の差し替え、いわゆる再計画も発生するしね。
だいたい分かった、でもリソースとか設備や人の負荷が
そうね。負荷が平準化されているかと言えば、されていないかもしれないのね。
納期遵守でスケジュールしているので、どこかのリソースは、過負荷が解消されていないかもしれないんだけどね。
でもそれでいいのよ。
特定のリソースが200%以上とかの負荷状態にあるときは問題なので、残業、休出、休日出勤とかで対応するかもしれないけど、でもグループや係などで集計した負荷をみたら、そんなに大きな過負荷では無いかもしれないし。
そもそも昨日、作業時間を正確に見積もる事は困難。
しかし経験的な工数算出は可能だが、作り直しが発生したり、設計変更が発生する。
と言うことは、事前に予測することは困難でしょ。
って説明したよね。
それにね。1時間、2時間の過負荷を解消するために残業設定したりするシミュレーションなんて、
やるだけムダでしょ。
そもそも作業時間が正確じゃ無いのにね。
負荷は見えることが大事なのよ。
負荷が見えれば、対処出来るでしょ。
シミュレーションで何でもかんでもやれるわけ無いのにね。
そうだね。
だから、遅れたり、新たな作業が発生した場合には、タイムリーに計画を組み直すしかないでしょ。
なんか分かったような、
そう、そのためには進捗状態をタイムリーに把握できないといけないの。
うんうん、その進捗状態って言うのが問題で、設計変更や仕様変更や補正作業が発生した時は、工場の中を駆けずりまわって、どこまで進んだいるかをメモして、また計画を作り直しているんだけどね。
しかも徹夜で!
進捗状態の把握は難しいのよ。
理想は、現場作業者や班長とかが、
タイムリーに進捗状態を把握してくれる仕組みが必要になるよね。
私のお客さんはね、作業現場の要所要所に端末が有って、そこに作業者が開始や終了、進捗率や残工数を入力してるの。
えー、たいへんだよね。
そうよ。
でも量産工場の様に、センサーで数量をカウントしたり出来ないし。
設定した作業時間が正確ではないでしょ。
10時間の予定作業を5時間作業したからと言って、50%の進捗じゃないよね。
そうだね。
でしょ。
でも実際に作業している人は、後どのくらいで終わるか解るよね。
だから残りの時間を入れてもらうの。
残工数って言うんだけどね。
その日に作業を開始して、その日に終了するときは、いらないけどね。
明日も作業の続きがあるときは、残工数とか進捗率とかで補正してもらうの。
そんなの入力してくれるかな、現場の作業者にお願いできそうにないな。
アレー、だって、頻繁に計画変更が発生して、その度に現場の人から次は何やるんだよ。
とか現場の人に現物確認をお願いしたりとか、現場も毎回困ってるんだよね。
って言ってたけど。
うん。
だから、毎回みんなあたふたするのは厭でしょ。
だったら、進捗の見える化って言うんだけど。
なにが何処まで進んでいるか一目瞭然になったら、計画変更も直ぐに出来るでしょ。
会社としては、ムダな時間が無くなるはずだけどね。
それに比べたら、実績や進捗報告する時間なんて、何分もかからないでしょ。
現物確認したり、進捗確認したりする時間ってどのぐらいかかるか分かってんの?。
私たちの仕事も必ず報告書書いたりするでしょ。
ほんとにこんな簡単な事ぐらいちゃんとやって欲しいのよね。
って、
あっ、ごめん、
別のお客さんの愚痴ぽいこと言ってしまった。ごめんなさい。
途中から話に熱がこもっっていたので、なんか私の理解が悪くて、怒っているのかと思いましたが、違ってました。
解った。
要点をまとめると、
前詰めで計画をする。
負荷の見える化が出来ていれば、少々の負荷オーバーは気にならない。
作業は遅れてもいい。
でも、現場で、作業順番を変えてはいけない。
現場は、タイムリーに進捗報告をする。
この仕組みを短いサイクルで運用する。
でいいかな。
まあまあ解ったみたいね。